もしも啓太が女の子だったら!!




西園寺郁編





BL学園に転入してきた伊藤啓太がMVP戦を勝ち取ってから数日。
MVP戦にてパートナーを務めた西園寺郁は、
あれ以来会計室の手伝いに来た啓太にある想いを抱いていた。

初めて会った時から、好ましく思っていたが。
同じ時間を過ごすうちに、真っ直ぐな気性と素直で優しい啓太に、どんどん惹かれて行った。

そして、MVP戦が終わったとき、言ってくれた。
全身全霊をかけて、あなたを護ると。

正直、啓太に守られるのではなく、守りたいと思っていたが。
その言葉は、他の人物のどんな台詞よりも、西園寺の胸を熱く奮わせた。


が。


啓太はそれだけ言うと、にっこり笑って、
今日は帰ります、ありがとうございましたと可愛い笑顔を見せて、部屋に戻ってしまった。

その様子はあまりにも鮮やかだったので、西園寺はうっかりタイミングを逃してしまったのだ。
本当はあの時に抱きしめてしまいたかったのに。

その後、会計室によく姿を見せるようになった啓太だったが。
西園寺は、あることに気づいた。


啓太は、触れられる事を極端に避けている。
自分はもとより、誰に対してもである。

それとなく聞いてみると、「男っぽくなくて華奢だっていつもからかわれるから」と笑った。
明らかにごまかした笑顔で。
そんなこと、よく女性と間違われるじぶんにだって多々あることだ。
気にする事ではないと、西園寺は啓太に幾度となく言った。
だが、啓太の反応は変わらず。
相変わらず、身体に触れられる事を避けている。

嫌われているわけではない。それは分かっている。
啓太の西園寺を見る眼は、いつも好意と敬愛と…慕情に満ちている。
それは自分自身も同じだと、西園寺は思っているし、それは事実だった。

だからこそ、啓太の態度は西園寺には辛いものだった。
自分だって、男なのだ。
愛している存在に触れたいし、抱きしめたいと思う。

啓太はそう思ってはくれないのか。


西園寺の悩みは日々増大していた。


そして、ある日。

爆発した。



「啓太!!!」
「は、はいっ??!!」

その日、七条に自室で仕事をするように命令し。
啓太と二人っきりの会計室で、西園寺は急に大声を出した。
驚いた啓太は、驚いたままに返事をする。

そして、西園寺はずっと言いたかった事を言った。

「お前は私をどう思っているのだ!?」
その鬼気迫る表情に啓太は驚きながらも、返事を返す。

「え…。あの、好き…です。」
「そうか。なら何故私に触れる事を許さない?!」

「ええっ?!」


啓太の顔に、恐怖の色が見えたことに、西園寺は一瞬戸惑ったが。
それで許せるほどに、啓太への想いは軽いものではなかったので。

「啓太…。」
「わぁ…っ!さ、西園寺さ…。」


そのまま、啓太の近くにあったソファに押し倒した。


「や、やめて…っ西園寺さ…。」
「もう止められない。愛してる…啓太…。」

西園寺は思いのままに啓太の身体に覆いかぶさるように触れた。
そして、その掌が啓太のほっそりとした首から胸元に触れたとき。

西園寺はありえない感触に気づいた。


「…え…?」

「あ。」


西園寺は驚いた。
あまりにも驚いた。


そして、ついその感触を確かめた。
何度も何度も。

要するに揉んだ。


「…ん…っ、ちょ、西園寺さん!!そんな、何回も…!!」
流石に何も反応せずにいられない啓太の声に気づいた西園寺は、
真っ赤になって少し瞳をうるませた啓太と目が合った。


その表情はそれはもう可愛らしく。

今知った事実とを反芻し、西園寺はにっこりと笑った。


「…原因はこれか?けーた?」

「は…はい…。」


「そうか。こんな重要な事を恋人である私に黙っていたわけか。
 いい度胸だな。覚悟はいいか?」

にこにこと笑う西園寺の額には…青十字が浮かんでいた。

「え、あっ…やぁ…っ!!」



暗転。



#########

「だから言っただろう、気にする事はないと。
 お前は身も心も十分すぎるほど魅力的だったぞ?」

いとおしい少女の心も身体もしっかりと味わって手中にした西園寺は非常にご満悦だった。

「……。」
一方啓太は、好きな人の思っても見ないほどの大胆さに放心しつつ、頬を染めていた。
どうやら、こちらも幸福な一時をしっかり味わわせてもらったようである。

そんな啓太を見ながら、西園寺は優しく微笑んだ。
「何を心配していたのかは知らないが、私はお前がなんであれお前であるから愛してるんだ。]

「西園寺さん…。」

そして、啓太の肩に触れると、ゆっくりと抱き寄せる。
「…これで秘密はなくなったな。これからは…遠慮なく触れさせてもらえる。
 そうだな?啓太。」
西園寺の優しく艶やかな笑顔に、啓太も満面の笑顔を返した。

「…はい!!」




そして、その日、二人の絆はとっても深まりました。



おまけ

 「ところで啓太。お前はもう16だったな?」
 「え?はい。」
 
 にっこり。

 
 「臣!すぐ婚姻届の準備だ!
  私は啓太と結婚するぞ!!」


 「えーーーーーーーっ???!!!!」

 「…ご満悦の所すみませんが、郁。
  あなたはまだ18には遠いはずですが?」


 どうやら西園寺さん、幸せすぎてはっちゃけていたご様子でした。



                                         end


思ったより長くなりましたね…啓太君が女の子だったら!第1弾は西園寺さんです。
この人だったらすぐ結婚してもいろいろ問題なさそうですしね。(経済面とか。)
ここまで書いてて気づいたんですが。
女の子にする必要やっぱあんまりないですね(笑)
でもま、「実は」っての私的に大好きなんです。
…これはあの話でも実践してますので。すみません。

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